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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 一般社団法人キリスト教学校教育同盟

新たな時代におけるキリスト教学校の使命と連帯-いのちの輝きと平和を求めて-

一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

Assocition of Christian School in Japna Since 1910

キリスト教学校教育バックナンバー

第95回総会 シンポジウム発題
キリスト教学校の担い手は中高の学校教育で

平塚 敬一

(1)地方と中央の格差
  地方における中高の現実は生徒募集において思いもかけなかったような苦戦を強いられている。特に女子の伝統校において厳しい状況である。もともとキリスト教学校は女子教育から始まったことを考えるとそれぞれの学校の努力だけでは解決できない問題であると思っている。一方、この春の首都圏中学入試は、受験者数約五万八千人(昨年より五千人増)、小学校卒業生の中学受験率一八・九%でともに記録を更新した。公立を含むとはいえ首都圏では二人に一人、東京では五人に一人が中学受験をした。ただ、すべての私立中学で受験生が増えたのではなく、減少した学校もあり二極分化が進んでいるようである。この地方と中央の格差を、また二極分化を同盟としてどのように考えていくのか。それぞれの学校の経営努力に任せて知らんぷりをしていてよいのか。現在何とか生徒を確保している学校もいずれ直面することになるのではないか。

(2)建学の精神、理念の具現化
  キリスト教学校に学ぶことでキリスト者となったという数が現在のキリスト者中一番多いのではないだろうか。日本人の一〇%以上が学校において聖書を読み、礼拝に出席し、キリスト教の生き方に触れてきたはずである。キリスト教学校が種まきの役割を果たしてきたのである。しかし、世の中の変化についていけずキリスト教学校がただ単に古きよき過去を振り返って建学の精神や理念を強調するあまり、その原則に固執した制度や組織にのみ依存しているならば受験生の保護者や一般の人たちの信頼を得ることはできないのではないかと思っている。多様な価値観を抱え込む現代は、価値観を堅持しながらも異なる価値観を持つ者といかに対話し、協調していくかが問われている。建学の精神とか理念を世間にも通用する言葉で納得のいくように伝えていけるかということであろう。

(3)魅力ある教師を求める
  地方のキリスト教学校を支援する上でも魅力ある教師が必要である。かつては人間的な魅力や専門的分野に力量のある教師が数多く存在していたように思われる。ところがバブル期に学校教育や教師という職業そのものに魅力がなくなってしまったことや金中心の世の中にどっぷりつかってきた時代を反映して教師を志望する割合が減ってきた。その上、多くの私学同様肥大化したキリスト教学校は、この世の受験体制、競争原理に何とか合わせていこうとの方向に力を入れ過ぎてしまったようだ。そのためにキリスト教学校は時代の一般的な評価に流されて独自の教育を少なからず見失ったのではないだろうか。現実を無視することはできなかったが、キリスト教教育の本質を世の中に丁寧に発信してきただろうか。それぞれの学校が、その土地に根づいたローカル色豊かな個性を打ち出し魅力ある教育をしていくことで、本当に優秀な教師が集まってくる工夫をしてきたのだろうか。たとえば、明治初期のように政府や社会が放置していた女子教育など体制からはみだしたような教育を今の時代に各学校が構築してきたかどうか。それは文部科学省のお墨つきがなくても、社会の評価とは違ってもやらねばならないものであったのではないだろうか。

 そのような中で特にキリスト教学校の教師に関わっていこうとする気持ちをどのように育てていくかということである。それは早い時期からの素地作りを真剣に考えることだ。大学生になってからキリスト教学校の教師を志すだけではなく、中高の生徒の時に掘り起こされたキリスト教の精神を教育へと注いでいく方向へと向けることだと思っている。中高時代に十分掘り起こされておれば、その資質面で大学において知識を身につけ養成期間なしに即戦力となるだろう。(立教女学院の生徒のアンケート提示)

 教育は教師の資質が重要である。キリスト教の精神を身につけた上でいかに人間的に魅力があり、専門的な力量を備えた教師を採用するかにある。また同時にキリスト教学校は、キリスト者教師だけでなくキリスト者でない教師と協力して教育を行っていかねばならない。広い視野を持ったキリスト者教師が求められる。何としてもキリスト教学校を現代の若者が自分の人生を賭けるに値する職場として真っ先に選択するような魅力あるものにしなければならない。ようやく誕生した教員後継者養成プロジェクトを活力あらしめるには加盟校の理解と支援が必要である。

(4)五つの提言
 現在の状況を改革せずに数少ないひと握りのキリスト者の中から採用し続けるならキリスト教学校は生徒の指導面および学力において低下の一途をたどりキリスト教学校として立ちゆかなくなると思っている。今後の解決の道筋として①中高時代に資質ある人間を如何にキリスト教教育に向けていけるか。(中高の役割)②キリスト者学生を如何に資質(特に学力)ある教師として育てるか。(大学の役割)③中高から大学へ連携させ、地方の学校の支援と結びつけられるか。大学の現在行われている推薦入試に教員志望者枠を設ける。(中高大の指導者の役割)④キリスト教学校がその地方における魅力ある学校になるか。(同盟全体の役割)⑤採用したキリスト者でない教師をキリスト者教師として育てていけるか。(指導者の役割)

〈立教女学院中学校・高等学校校長〉

キリスト教学校教育 2007年7月号6面