キリスト教学校教育バックナンバー
キリスト教Q&A
一神教
和田 道雄
「目を上げて、わたしは山々を仰ぐ。/わたしの助けはどこから来るのか。わたしの助けは来る/天地を造られた主のもとから」(詩編121・1)
私たち日本人は、緑豊かな山を見ても、この詩編の詩人のような危機感をもつことは無いのではないでしょうか。つまり一神教は砂漠の宗教としての性格があり、多神教には、豊かな自然や次々と命を生み出す力を感じる環境があると言われています。昨今は自然環境との繋がりを余り強く言わなくなりましたが、大きな影響を与えていることは確かなことでしょう。今回は一神教について学びましょう。
Q1一神教と言われる宗教にはどんなものがあるのですか。
A 古代エジプトのアトン信仰が世界最古のものと言われていますが、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教がその代表と言えるでしょう。そしてこの三つの宗教は旧約聖書を共有する兄弟関係にあるのです。
旧約聖書―ミシュナ・タルムード―ユダヤ教
旧約聖書―新約聖書・(その他の文書)―キリスト教
旧約聖書―コーラン―イスラム教
ユダヤのジョークに次のようなものがあります。ある男がユダヤ教の礼拝所(シナゴグ)で一生懸命に祈っていました。「神さま、助けてください。息子アブラハムが、キリスト教の洗礼を受けてキリスト教徒になろうとしています。息子を思いとどまらせたいのですが、どうしたらよろしいでしょうか」。神さまはこうお答えになられました。「あきらめなさい。実は私の息子もそうだったのだ」。もうお判りでしょう。神さまの息子とはイエスさまのことです。
Q2一神教は世界の中で、どのくらい信じられているのですか。
A 旧約聖書でひとくくりすると五二・八%の人口比となります。
キリスト教徒―二十億二千万人(三二・九%)
イスラム教徒―十二億一千万人(一九・七%)
ユダヤ教徒―千四百万人(〇・二%)
また紙面の関係でここに掲載しませんが、宗教分布図を見ても、世界の多くの国々で人々に大きな影響を及ぼしているのです。
Q3 聖書の中に「一神教」に触れられている個所があるのですか。
A 十戒の第一の戒めに「あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない」(出エジプト記20章3節)と書かれています。イスラエルの人々にとってヤハゥエ以外の神さまを礼拝することはありえないと、はっきりと言っていますが、他の民族の神さまに触れている個所があり、他の神さまの存在を全く否定してはいないのです。こうした立場を「拝一神教」と呼んでいます。その後、王国の分裂・崩壊、バビロン捕囚等の苦節を経て、世界人類において神さまはヤハゥエが唯一であるという「唯一神教」へと高められていくのです。バビロン捕囚末期に活躍した第二イザヤと呼ばれた人が「わたしは初めであり、終わりである。わたしをおいて神はない」(イザヤ書44章6節)と記しています。
〈明治学院中学校・東村山高等学校校長〉
キリスト教学校教育 2006年11月号4面