キリスト教学校教育バックナンバー
全体会のまとめ
伊藤 悟
第三日目の全体会は、小林俊哉氏(新島学園短大)と山口博氏(酪農学園大)の司会によって行われました。はじめに、参加者から出された第一日目の主題講演に対する質問に、特別講師の近藤勝彦先生が丁寧に答えるかたちで、講演の補足をしてくださいました。近藤先生は、キリスト教学校がつねに設立趣旨を保つこと、感謝と喜びをもって「途上の営み」に耐えること、自由と理想を掲げ続けることを力強く説いてくださいました。そしてそのために、学校における「祈り」重要性を強調されました。
その後、全体討議に入りました。前日までの二回の分団で話題になったことがらを中心に、実行委員があらかじめ三つの共通テーマにまとめ上げ、それらをめぐってのディスカッションとなりました。共通テーマは以下の通りです。
共通テーマ
一、学校礼拝の課題と可能性
二、キリスト教学校の担い手とその協働性
三、学校・教会に求められるそれぞれの役割
学校礼拝について考えるとき、小中高と大学とではどうしてもその取り組みに温度差が生じることがあります。小中高では日々の礼拝をいかに豊かなものにしていくかという具体的な方策に関心が向けられるのに対して、大学ではしばしばキリスト教大学における礼拝の位置づけそのものが議論されます。それでも全体会では、いくつかの学校の取り組みが紹介され、各々に学校礼拝について考えさせられました。
中高からは礼拝ノートの実例が複数紹介されました。聖書科担当者だけではなく、担任を含めて複数の教員が生徒のノートを読むことによって生徒たちの成長をより多角的に見守ることができ、教員全体の礼拝に対する意識向上にもつながっているという報告もありました。また生徒が主体となって行われる礼拝についても語られ、「豊かな礼拝」をめぐっての議論が盛んに行われました。
大学からは、多くの大学で礼拝は自由出席であるため、学生を礼拝に招くところから苦心しているとの報告がありました。「行ってみたらよかったのでまた」というリピーターが増えてくれることを期待しながら、各大学で工夫がなされているようです。そのためには礼拝でのメッセージに工夫を凝らしたり、チャプレンとの個別的関わりを重視することも大切なことです。
休憩をはさんだあとは、キリスト教学校における教員間のかかわりについて話し合われました。キリスト教学校の理念の担い手とは、その学校に所属するすべての教職員に他なりません。しかし、キリスト者教員の比率が近年著しく低下していることもあり、学校の理念についての共通認識をなかなか持ちにくくなっている状況があるとの報告がなされました。
建学の理念とはまさにキリスト教学校の強さですが、ときとして学校内でもそれが「保守的」として受け止められることもあるようです。キリスト教学校で奉職する以上、キリスト者も非キリスト者も、建学の理念に対しては共通認識をもっているはずで、それを「キリスト教学校だからできること」へと具体的に転換していくが今日求められています。
協力がなければ成立しないのがキリスト教学校であり、「この学校がキリスト教学校でよかった」と思えるような学校づくりが必要だとの声もありました。また、日々の学校礼拝を通してすべての者が招かれた存在であることを確認していく必要性がある、今日的状況の中でいかに倫理性の高い社会人を育成するかもキリスト教学校の課題ではないか、などの意見も出されました。
三つ目の教会との関係については十分に話し合う時間はありませんでしたが、全体として活発な会となりました。
〈夏期研究集会実行委員長、青山学院大学宗教主任〉
キリスト教学校教育 2006年10月号3面