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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

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キリスト教学校教育バックナンバー

第48回小学校代表者研修会

主題「キリスト教小学校に期待するもの」

吉田 太郎

 第四十八回小学校代表者研修会が、一月十六日(月)・十七日(火)にナビオス横浜にて開催された。

 「畏れをもって子どもたちの教育にあたること」と題して、キリスト教学校教育同盟理事長(明治学院学院長)久世了先生による講演が行われた。

 子どもだったころの忘れられない日々、学ぶ側の精神生活について話したいということで、国民学校で過ごしたご自身の戦争体験について語られた。当時の国民学校の教育とはナチスドイツに倣ったもの(ゲルマン民族の優秀性を教え込む)で、日本人にも民族意識を叩き込む厳しいものであった。そもそも学校給食は戦時中に始まった。食料が配給制度になり、子どもの食料を確保する必要が出たためで、戦争政策の一環であった。一九四四(昭和十九)年には集団疎開、縁故疎開、児童疎開が行われるようになった。将来の戦力を確保する必要があったためで、小学校三年生(九歳)のときにご自身は静岡県へ疎開する。

 国民学校では教育勅語、お経、歴代の天皇の暗誦をさせる。六十年たった今でもそれを覚えている。小学生に物事を叩き込むと強烈に残る。戦争が激しさを増すと、静岡もいよいよ危ないということになり、青森の弘前へ疎開をすることになった。弘前への道中、品川の駅で親子の面会を許される。弘前ではまず「りんごに手を出すな」と言われた。食料難、ご飯といえば玄米だった。糠をとるのは贅沢だと言われていた。おなかを壊すと、おかゆがでた。おなかをすかしていたので蛙まで食べた。終戦後、弘前から東京まで引き上げるときにも、石炭不足で列車が走らず、三日かかった。東京へ帰る前、ある農家に泊めてもらった。そのとき食べたおなべのおいしかった味は忘れられない。弘前での疎開中に忘れられない先生との出会いがあった。その先生は軍国主義の時代にありながらも、子供たちに対して丁寧に優しく接してくれた。謙虚であたたかいお人柄であったことを今でも覚えている。終戦後、教師の態度が一変した。軍国主義から民主主義に。特に最も軍国主義に熱心だった教師が豹変する姿に、立派なことを言う人、熱心な先生ほど信用しないほうがよいという固定観念を植え付けられた。

 九歳、十歳くらいの子どもは後々につながるような大きな精神世界をもっている。子どもを子ども扱いしすぎるのはよくない。子どもは豊かな感受性をもっており、誤った接し方をすると傷つけてしまう。世の中の動きの中で態度を変える大人、教師であれば子どもは不信感を持つだろう。

 キリスト教小学校には何が大事か?それは、子どもたちが自分をひとつの人格として大切扱われたという思いを持てるかどうかということに尽きるのではないか。同じ目線で付き合える大人、教師側から見るというよりも、向こう側(子ども)から見るという姿勢。子ども側の立場を尊重できる教師であって欲しい。大人はもっと子どもに対して畏れを持つ必要があるのではないだろうか?畏れをもって子どもたちの教育にあたることが大切である。

 また近代日本の教育をどのように評価するかということも明治維新がジャパンモデルとして国家による改革モデルとして理解されていることにふれ、日本の急速な近代化に果たした学校教育の重要性についても語られた。同時に学校教育は天皇制というイデオロギーの注入装置であったこと、また、男女分業という価値観を形成し男性は富国強兵へと駆り出され、女性はそれを支えることがよしとされたことなどにもふれられた。現代の少子化の問題は男性の育児参加、よき家庭人たるかということに尽きるということも話題となった。

 また、小学校の教育に携わる我々が忘れてはならないこととして、小学校時代の学力というものへの不確かさについてお話された。小学校時代の学力よりも、モチベーションが高い子どもが最終的には有利であること、いわゆる「後伸び」を信じて待つことが大切である。学力にはモチベーションが重要。何かに夢中になって熱中できるものを大切にしてあげること、それが社会的な意味を持つ日がくるのではないだろうか。という問題提起がなされた。

 久世先生の人生経験を通して語られた現代の教育の課題に、参加者はそれぞれ豊かな学びの時を持つことのできた研修会となった。また本研修会には教育同盟理事、倉松東北学院学院長もご出席いただき、実り多い研修会となったことを感謝をもってご報告します。

〈立教女学院小学校宗教主任〉

キリスト教学校教育 2006年4月号2面