キリスト教学校教育バックナンバー
関西地区
現代学生の心の深みをたずねて
地区大学部会研究集会
山﨑 正幸
第四十九回関西地区大学部会研究集会は、「現代学生の心の深みをたずねて」との主題を掲げ、十月二十八、二十九日広島市内で開催された。出席者十八大学二十四名。
開会礼拝の後、樋口和彦氏(京都文教大学学長、同志社大学名誉教授)が「大学と学生の心の深層」と題して講演。
氏は、神学者・牧師でありつつ仏教主義大学の学長を務める経験から、キリスト教主義大学が社会の中で意味を持つ大学であるためには、建学の目的を一層明確に自覚・実践することが重要であることをまず指摘された。本題に入り、キャンパスを学生が「子ども」から「大人」へと変容する世界と捉え、このイニシエーションに寄り添いケアすることを大学教育の課題として事例を上げつつ提言された。
二日目は、まず二名の発題に基づく全体協議を実施。
三木メイ氏(同志社大学キリスト教文化センター)は「現代青年の魂の彷徨と大学教育」と題して発題。四月のJR福知山線脱線事故・バス事故に伴うチャプレンとしての取り組みを通し、死を悼むコミュニティの必要性を実感させられるなかで垣間見た社会的自己領域が縮小している若者達の心的世界を紹介。更に、実践神学・人間関係論等の体験学習による授業実践を紹介しながら、学生の自己確立・他者理解促進への援助を大学教育の課題として提示された。
伊藤高章氏(桃山学院大学)は、「エロースの枯渇した『愛』を求める現代学生」と題して発題。スピリチュアルケアの臨床教育と実践、海外体験学習指導・学生生活委員長としての経験から、現代学生の状況を、エロース(身体性)から乖離した世界で生のリアリティーを模索していると提示。エロースに触れる体験学習の必要性を提唱するとともに、そのためには教師自身のエロースとの取り組みが必要だと問題提起された。
その後、被爆六十周年を迎えた広島での開催をおぼえ、平和記念公園において特別プログラム「ヒロシマを考える」を実施。広島女学院大学学生による説明を受けながらの「碑めぐり」、山岡ミチコ氏による被爆証言を聴く集いを持ち、閉会祈祷をもって集会を閉じた。
〈松山東雲短期大学宗教主事〉
キリスト教学校教育 2006年1月号3面