キリスト教学校教育バックナンバー
第49回大学部会研究集会
まとめ
横浜バンドに学ぶ教会と教育の関係
横浜バンドに学ぶ教会と教育の関係
小室 尚子
第四十九回大学部会研究集会は、主題を「人をはぐくむキリスト教学校―横浜バンドに学ぶ―」として、九月七日~八日の日程で横浜のホテル キャメロット・ジャパンにて開催されました。出席者は四十三名でした。
今回は、日本におけるプロテスタント・キリスト教の宣教展開の重要な原点の一つとなった「横浜バンド」の形成とその活動の内容について学び、現代のキリスト教学校に生きる私たちがそこからあらためて何を受け取ることができるのかを考えることを目指しました。
そのために講演を日本基督教会横浜海岸教会牧師の久保義宣氏に依頼し、氏から「幕末明治開国期 横浜における福音宣教と教育」という題で、単に歴史を概観するだけでなく、日本宣教の原点としての意義について洞察に富んだご講演をいただくことができました。
また全体会においては、ご多忙のため講演後退出された久保氏に代わり、日本基督教団横浜指路教会長老・明治学院大学非常勤講師の岡部一興氏が質疑に応えてくださいました。
翌日は、横浜バンドゆかりの史跡を巡るツアーを企画していましたが、岡部氏はその案内役も引き受け、解説を加えてくださいました。
今年も台風の接近で、各地から参加される方々の道中を心配しましたが、当日は晴天にも恵まれて豊かな成果を得ることができました。
開会礼拝担当は、聖学院大学の阿部洋治氏。ローマの信徒への手紙七章十五節~二十五節の御言葉により説教題を「人間の惨めさを見つめて」とされ、若者達が実存的問題に直面している今日、人間の弱さの根源である罪の問題を提示し、そこからの解放の道を示すのがキリスト教学校の使命であり、自ら自分の命を支えられなくなっている若者の現実に、キリスト教学校として向き合う姿勢についての示唆を与えられました。
開会の挨拶は教研大学部会委員長の小林俊哉氏。続いて久保義宣氏による講演(前掲)。埋もれた資料の発掘と詳細な分析から、定説の修正や、他の二バンドと比較した時に見えて来る横浜バンドの特徴など、大変興味深い講演がなされました。
十九世紀のミッション・ボードの宣教の目的が、宣教師たちを送り出して、ただ教会を建てあげることだけにあったのではなく、宣教の対象とする人々の全人的な救いを目指していた、即ち、宣教師達は医療や教育などのさまざまな活動を宣教活動の一環として捉えていたということは傾聴すべきことでした。教会とキリスト教学校の関係の原点もここにあると考えられるでしょう。
講演時間内での質疑応答では、現代の日本のキリスト教界において、とくに教会の側からキリスト教学校の教育を見直すことが必要であり、全人的教育を担う学校に教会がより積極的に関わらなくてはいけないのではないか、との見方に関心が集中しました。
二日目は朝食後ツアーに出発し、カトリック山手教会、フェリス女学院中学校・高等学校チャペル、横浜外人墓地を見学し、終着点の日本初のプロテスタント・キリスト教会である横浜海岸教会で閉会礼拝をもちました。担当は関東学院大学の帆苅猛氏。コリントの信徒への手紙一の一章二十六節~三十一節より「神の選び」として説教がなされ、閉会となりました。
〈東京女子大学助教授〉
キリスト教学校教育 2005年12月号2面