キリスト教学校教育バックナンバー
キリスト教学校教育懇談会
活動を顧みて
深町 正信
二〇〇一年のある日、英国大使館で偶然に白柳大司教とお話をする機会を与えられました、そのとき、私は日本宣教の前進のために是非、教育の場でお互いに協力が出来ないでしょうかと、お話を申し上げました。
すると、しばらくしてご連絡を頂き、日本カトリック学校連合会の小崎次郎前理事長が私を訪問してくださいました。これをきっかけとして、二〇〇二年の第九十回キリスト教学校教育同盟全国総会開催の折、教育委員長溝部修司教と小崎次郎理事長(前広島エリザべト音楽大学理事長)をお招きして、カトリック学校の現状と教育の理念をご講演いただくことができました。一同は深く感銘を受けました。
小崎次郎先生は日本カトリック学校連合とは何か、その組織と働きを話され、そして、連合会が直面している問題と今後の課題について話されました。
そして、「カトリック学校の起源は、孤児や貧しい家庭の子供を養育する目的で様々なカトリック修道院によって開始され、エリート教育よりも貧しい人との協働を主眼としていた。現在もこの建学の理念を大切にしたいが、市場原理も考慮しなければならず、学校教育は今、多くの課題に直面している。また、このような状況において、修道者が減少し、信徒による学校経営に移行せざるを得ない事情もあり、この点に関してプロテスタント学校に学ぶことが大切であると考えている」と話されました。
ついで、日本カトリック教会仙台司教区司教、カトリック学校教会委員会委員長の溝部修先生が「カトリック学校教育の動向」と題して講演され、第二バチカン公会議以降のカトリックの動静について解説してくださいました。そして、カトリック学校の教育が目指してきた全人教育を大切にしつつ、今後どのようにキリスト教教育のアイデンテイテイーを打ち出して行くかについて見解を述べられました。
また、これまでのカトリック教育は、福音、聖書、御言葉に聞くことを軽視してきたきらいがあると述べ、今回の教育現場でのエキュメニカルな対話を契機に、キリストの福音に照らして、見直す必要性があることを指摘されました。
更に、二〇〇三年には日本カトリック学校連合会の理事長研修会と校長会に、キリスト教学校教育同盟の関係者をお招き頂き、プロテスタント学校の現状を率直に披瀝し、教育に関する相互の理解と交流を深めることができました。
私(青山学院院長)は「キリスト教学校教育同盟の現状と課題」について、また、久世了先生(明治学院学院長)が「学校法人統治」について話し、そして、山内一郎先生(関西学院理事長、院長〈当時〉)は「プロテスタントスクールの行方」と題する講演をする機会を与えられ、お互いに率直な意見交換をすることが出来ました。
更に、「学校長、理事長、総管区長の集い」では女子学院中学高等学校校長の田中弘志先生が「キリスト教学校からのメッセージ」と題して講演され、永年のご自身の経験に基づく貴重な意見を述べ、相互理解を深め、双方の連携を強化することができました。
二〇〇四年には、「キリスト教学校教育懇談会」を開き、双方から委員を出し、協議を重ねた結果、「第一回公開講演会・フォーラム」が青山学院大学で行われました。
主題は「今、あえて何故女子教育か」、講師は東京女子大学の湊晶子学長にお願いしました。又、四名のパネリストは、キリスト教信仰を建学の精神に掲げる女子校であり続ける意味は何かを論じ合いました。
湊学長はご自身の体験から「自分の心を治め、自由にし、又、解放し、女性リーダーのモデルに出会う場がキリスト教女子学校教育である」と述べられました。
キリスト教女子教育の理念としては、女性の自己確立と自己実現、男女共同参画社会の実現をあげる一方、男性と女性のパートナーシップとお互いの人格をどう生かすかが今後の課題であるとされました。
二〇〇五年に「第二回公開講演会・フォーラム」が聖心女子大学で行われ、「女子校は時代おくれか」と題して、聖心女子大学の山縣喜代学長にご講演をいただき、又、四名のパネリストによる有益な意見交換がなされました。
山縣学長によれば、女子学校教育では、女性の教育に関心や労力を集中させることができることや、女性が男性に依存しないで、表現力や企画力、組織力やリーダーシップ等を身につける機会が多いことが指摘されました。そして、」女子校は自己確立を容易にし、真の意味の女性の解放を促す環境であると「結ばれました。
実行委員会では「キリスト教学校懇談会」の活動を一人でも多くの方々に知っていただくことを願い、第二回の公開講演会のご講演の内容とパネリストの方々の発言の要旨をパンフレットにすることになりました。どうか、各関係学校で活用され、たとえば、教職員研修会等でもご利用いただければ、幸いであります。
結びに、「キリスト教学校教育懇談会」が、今後の活動を通じて、学校教育においてエキュメニカルな動きをますます充実させてゆくことを大いに期待したいと思います。
〈青山学院院長〉
キリスト教学校教育 2005年11月号2面