キリスト教学校教育バックナンバー
45年目を迎えて
カウンセリング研究会
関西地区
原田 孝
一九六〇年十月に関西地区にカウンセリング研究会が設立されて以来、本年で四十五年になります。発足当初は年間四回程度の研修会と、一回の合宿研修が行われていました。当時は種々のカウンセリングが日本に紹介され、それがいろいろな分野に導入されて行った時期であります。そして当研究会は、学校の教育現場にカウンセリングを導入しようという試みのひとつでした。これが先輩諸氏の先駆的な働きでスタートした研究会の始まりです。
その後四十年に亘って、毎年研修会と合宿研修が繰り返されました。この四十年の歴史につきましては関西地区のカウンセリング研究会四十周年誌をご参照ください。加えて現在では「事例研究会」、「スクールカウンセリング担当者の集い」と活動を拡大しています。
さて、四十五年目を迎えた本年は以下のような四つの活動を主に行っております。
第一には、年間二回の研究会です。本年度第一回研究会は六月、第二回研究会は来年二月に開催します。この研究会はそれぞれの月の土曜日午後に関西地区の同盟校を会場としてお借りし、毎回異なる講師をお招きし二時間程度の講演と質疑を行います。種々のカウンセリング技法の紹介から、学校教育相談の紹介、カウンセリングを応用したクラス運営など、様々な分野の講演やワークを実施しています。
第二には、夏期合宿研修会です。八月中旬に信州(長野県大町市の北にある美麻村)の民宿をお借りして合宿研修会を行います。研究会発足当初は五泊六日でしたが、その後は四泊五日で行っています。北アルプスを望む豊かな自然に囲まれた一軒の民宿を借り切り、襖で仕切られた畳部屋にみんなで泊まります。都会で行われる研修会では考えられないような世界です。この場所に講師をお招きし、講演を聴くと同時に参加者のグループ作りを行います。異なる学校・教科・分掌の先生方が集まり、いろいろな問題を共有する―カウンセリングをテーマに友達の輪を作る恰好の機会でもあります。また、同時に参加者の教育分析も行われます。学校現場での生徒の問題、教師間の問題、学校組織の問題など種々の問題を、五日間という長い時間をかけてみんなで分かち合い考えます。
第三には、事例研究会です。年間五回開催されます。五月、七月、九月、十一月、一月の土曜日です。各同盟校から事例を持ち寄り、事例提供者が簡単な解説をします。その後、参加者の質問を聞き、今後の対応の仕方を協議します。そしてカウンセラーや精神科医に事例の分析をしていただき、総括的なコメントを受けます。個々の生徒に関して複合的で深刻な問題が出てきたり、担任や養護担当者の直接的な悩みであったりするケースが多いようです。それに応じてコメンテーターからも、毎回具体的なお話を聴くことができます。
第四には、本年より始めました「スクールカウンセリング担当者の集い」です。第一回は七月に行いました。年間一回の集まりですが、キリスト教を母体とする学校ならではのスクールカウンセリングを模索するという試みです。関西地区の各同盟校でスクールカウンセリングを担当しているカウンセラー同士のつながりを作ってゆくのも目的の一つです。また、各校の教育相談担当者のつながりも作ってゆきます。教職とは異なるスクールカウンセラーの立場、そのカウンセラーと教職員の間の連携を担当する相談係の役割の確認など、学校現場におけるスクールカウンセリングの組織を考えるための取り組みです。
以上のように、関西地区では現在ほぼ毎月一回の割合でカウンセリング研究会の何らかの活動が行われています。参加者の半数は二回以上参加経験がある方たちですが、はじめて参加される方も大勢いらっしゃいます。この方たちは担任であったり養護の先生であったり、今各々の現場で困ったことを抱えておられる方々がほとんどです。それぞれの研修会あるいは研究会では、先生方に悩みを口にしていただき、カウンセラーや宗教主任、教育相談担当者、管理職の立場にある人たちから多層的に適切なアドバイスがなされます。このように、学校現場から離れることなく現代のキリスト教カウンセリング的な考えを導入しつつ、次の教育現場に応用してゆこうという試みを実践しているのが、現在の関西地区のカウンセリング研究会の内容です。
〈清教学園高校教諭〉
キリスト教学校教育 2005年10月号8面