キリスト教学校教育バックナンバー
各地区の行事
関東地区
生き方を問い続ける学びの助成
第47回新任教師研究会
生き方を問い続ける学びの助成
高橋 貞二郎
八月八日より十日まで、ホテル箱根アカデミーを会場として第四十七回関東地区新任教師研修会が行われた。今年度は二十五学校から五十八名の新進気鋭の教師が集い、実り豊かな時を過ごした。
開会礼拝後、委員長の平塚敬一先生よりご挨拶の中で「設立年代や教派を超えて、キリスト教学校には『イエス・キリストの名によって建てられた』という共通の基盤がある」というお言葉をいただき、それぞれ所属する学校が異なるものの共通した基盤を持つ同労者である思いが強まった。
講師は、国際基督教大学教授・町田健一先生であった。また、講師の先生のご講演とは別に「私の経験」という内容で、岡部正彦先生(関東学院小学校)、高柳昌久先生(ICU高校)、松村誠先生(横浜英和女学院中高校)からの発題がなされた。発題された三先生は、ご自分の豊かなご経験からご苦労されたこと、工夫されてきたこと、さらには教師として心がけなければならないことなどについて示唆に富むお話しをご披露下さった。
町田健一先生は、「生き方を問い続ける学びの助成―キリスト教理解とキリスト教学校教育理解に基づき―」という演題で、教育現場の状況に即した次のような内容のご講演をして下さった。
1 キリスト教理解とキリスト教学校教育理解
キリスト教学校はその「建学の精神」に則り、私学として、キリスト教学校としてその存在意義を世に示す必要がある。キリスト教学校は、特に生徒の学習活動を教科の学び(狭義の学習)に限らず、「生き方を問い続ける学び」(広義の学習)の助成に、より努力すべきであると主張したい。キリスト教学校ゆえ、「人生の土台をどこに据えるか?(キリスト教信仰)」を問いかけ、クリスチャンとしての生き方を提示する必要がある。キリスト教学校教育は、「人間教育・全人教育そのもの」であり、それは「キリストとの出会い(魂の救い)への導き」で始まり、「(生徒の)キリストとの出会い」で完成するものである。キリスト教学校教育とは「その生徒を祝福し、(キリストにあって)真に活かす働き」であり、「(キリストにある)生き方を問い続ける学び」の助成だからである。
それゆえ、そのキリスト教学校で働く教師は、キリスト教学校の使命をよく理解しつつ、その土台であるキリスト教理解にますます励む必要がある。それは自らの生き方の土台となり、助け主を知ることになる。「キリスト教理解」が教師自らの「信仰」に、「キリスト教学校教育理解」が「信仰の実践」「信仰の証」を通して生徒をキリストに導く働きへとつながることを期待したい。望まれる具体的教育内容として、今回は「進路指導」と「性教育」を例示したい。
2 進路指導への提言
‥人生の土台をどこに据えるか
進路指導の順序とその指導内容、価値観形成の課題を問い直さねばならない。まず「自分の生き方」を考えさせる時間を多くとりたい。その土台となるキリスト教信仰をはっきり例示すべきである。当然卒業年度に始めることではない。その上で、その生き方を実現するための大きな夢を持たせ(職業指導)、そのためにはどのような教育を受ける必要があるか(進学指導)の順序で進路指導を構築すべきだ。私の調査では現実は逆で、しかもほとんどが偏差値による進学指導であった。価値観形成では、「競争・比較」「自分中心の考え方」の問題を指摘したい。今日、他との質的・量的比較でなく、自分が何かを仕上げ残す喜び、誰かを慰め生かす喜びの尊さを感得させる教育が求められている。「個性」「自己実現」理解とも重なる課題である。自己変革の課題とともに再考の必要を主張したい。
3 性教育への提言
‥人生最も誠実になるべきもの
性教育は今日のキリスト教学校に課せられた重要な使命である。なぜなら、「生命の尊厳・人権」「生き方(神の導きを求めつつ)」「人を愛するということ」のテーマを具体的な身近な問題として捉え、自分自身の価値観を問い直し、行動化できる機会だからである。現在行われている性教育は、「セックスは愛しあっている者たちにとって自然な関係・権利、それは十代であっても」を謳った避妊教育が主流であり、反論としての性教育「性感染症・エイズ脅し教育」も含めて、キリスト教学校としてどちらも受け入れにくい歪んだ性教育である。キリスト教学校において望まれる性教育は、「人を愛する」とはどういうことなのか、キリスト教の倫理観・価値観に根ざした「相手に最も誠実になるべき『性』」について共に考えることである。
大学だけでなく、以前中学校でも教鞭をとられた町田先生のご講演は、事例も多く説得力に富むものであった。伺った者は各々の現場でどのように先生がお話下さったことを活かすか真剣に考えた。
二泊三日という短い期間ではあったが、講演、発題、分団協議などによりキリスト教学校で働く同労者として問題を共有し、使命を確認し、新たな課題と希望を与えられた研修会であった。
〈東洋英和中高部教諭〉
キリスト教学校教育 2005年10月号6面