キリスト教学校教育バックナンバー
パネルディスカッション発題
いかに「忠実」に歩むか
板東 資朗
「西南よ、基督に忠実なれ」―西南学院の建学の精神を表すこの言葉は、創立者C・K・ドージャー(アメリカ南部バプテスト連盟宣教師)の「遺言」として学院に語られ、現在まで受け継がれている。キリスト教主義教育により「人格ある信仰ある紳士」の育成を目指したドージャーは、「安息日」の厳守(礼拝出席、運動部の対外試合出場禁止)をめぐって学生と対立し、学院を去った。しかし、その遺言は西南学院の教育目標として受け継がれ、後輩宣教師にあたる第十六代院長L・K・シィートは、「忠実」の内実をLife(生命)、Liberty(自由)、Light(光明)、Love(聖愛)という四つの概念で現代社会に即して説明し、建学の精神の継承と展開を指導した。
中高ではこの4Lをチャペルカリキュラムの期主題として、生徒・教職員に対して提示・強調すると共に、各種ボランティア活動、人権・「同和」教育他のプログラムを通して、建学の精神の具現化に努めている。
中高で広がりが生まれつつある、「福岡おにぎりの会」への参加・協力は、もともと私的な参加にとどめていた中、経験を授業で紹介するうちに関心を持つ生徒が現れ、中古衣類の収集、クリスマス献金など間接的な関わりを重ねることから始まった。夜の公園にブルーシートの住いを訪ね、おにぎりや衣服を届ける-思いがあれば誰でも参加できる活動であるものの、夜の(遅い時には二十三時を越える)活動であるため、誘うことを躊躇していた。しかし、どうしても!の声に、生徒と共に参加するようになり、昨年十二月の越冬支援には延べ五十名の生徒が参加。越冬期以降の月一回の活動に継続的に参加する生徒や卒業生、そして教員が与えられ、保護者からも協力の申し出が寄せられるようになり、励ましをいただいている。
生の「私物化」(privatization)の進行が感じられる現代にあって、共生・共同という生き方を示し、実際にその理念を体現する活動に参加するチャンスを提供することを課題として感じている昨今、まずは自身がいかに忠実に歩むかを問われているように思う。
目下、高校教育は「新課程」「少子化」という環境変化と保護者・世間からの高まる要求・評価の中におかれ、キリスト教主義校には「進学と神学」のバランスが問われる「険」学の時であるとも思われる。今回の発題準備の中、同僚から「建学の精神があるからこそ、(進学実績至上主義としない)『健学』になっているのではないか」との声を聞き、大いに共感し、励まされた。建学の精神の実践を考える時、一部(クリスチャン教員?)が大きな声で訴える「喧」、「見」学! ―かやの外に置くこと、いずれも健学を損なうであろう。「肩」を並べ、共に体「験」する活動に、生徒たちを「巻」きこんでいく中で、自らを「献」げることを学び、「遣」わされゆく者としての自覚の成長を願う-新米主任なりに、建学の精神と向き合い励んでいきたいと思う。
〈西南学院中学校・高等学校宗教主任〉
キリスト教学校教育 2005年10月号2面