キリスト教学校教育バックナンバー
建学の精神と伝統からの希望は
豊かな人材確保と養成が不可欠
山本 真司
開会 「子どもたちから言葉が失われていく中で、私たちが自分自身を捧げて、業をなして行こう」という示唆に富む佐々木道人氏(立教女学院中高)のメッセージで幕を開けた研究集会は四十八名の参加者を得て、三月二十四日から二泊三日、大阪駅に近いホテル阪神を主会場に行われた。
主題講演 お招きした竹中正夫氏(同志社大学名誉教授)は、キリスト教学校で働くものとしての使命感の復興を機軸に、行動原理として、聖と俗をどのように共有するかを原典主義と和をキー・ワードに縦横無尽に語られた。価値観が多様化し、社会の座標軸がずれているからこそ、キリスト教学校は建学の精神と伝統から希望を見出していくことができるが、そのためには豊かな人材確保と養成が不可欠であることを痛感した。
「そして、この巨大な発展が終わったときには、全く新しい預言者たちが現れるのか、あるいはかつての思想や理想の力強い復活が起こるのか。それとも一種異常な尊大さでもって粉飾された機械的化石が起こるのか、それはまだ誰にも分からない。それはそれとして、こうした文化発展の『最後の人々』にとっては、次の言葉が真理となるであろう。『精神のない専門人、心情のない享楽人、この無のものは、かつて達せられたことのない人間性の段階にまで、すでに登りつめた、と自惚れるのだ』と。」(マックス・ウェーバー 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波文庫下 246-247頁)
発題 「高校生は予想以上に働きます!生徒の可能性を広げる活動」北海道東北地区から、大中隆氏(とわの森三愛高校)が第二回国連軍縮札幌会議へ運営ボランティアとして参加した生徒の活躍を報告され、生徒に様々な活動機会を与える重要性を認識した。「日本女性のもつ特性に注目し、それをキリスト教倫理によってさらに高める」関東地区から、田村浩一氏(香蘭女学校中高)が英国国教会の創立理念を現代のニーズへどのように継承していくかを語られ、キリスト教学校が持つべき空間と時間の有り様を再考させられた。「教育改革の内実化への試み―異文化体験の中から」西南地区から、笹森勝之助氏(鎮西学院高等学校)がビジネス界からの切り口で、教育の「素人」だからこそできる基本への回帰を軽妙に説き、会場を沸かせた。キリスト教が学校のアプリケーションになってしまう傾向に抗してOSへの転換を提唱された点、「例年どおり」からの脱却をキリスト教の自己点検機能から見直す視点が強く印象に残った。
朝の礼拝 奇しくも同じテキスト(ヨハネによる福音書8・1-11)を用いた説教を横田法子氏(北星学園大学附属高校)「問われていること」、富田正樹氏(同志社香里中高)「よくわからない先生」から豊かに学ぶことができた。
川口居留地とコリアンタウン 大阪のキリスト教学校発祥の地を巡るアウティングは桃山学院とプール学院の研究会メンバーに案内いただいた。川口キリスト教会の阪神淡路震災と復興に始まり、歴史の彼方で学校創立に篤い祈りを捧げた多くの先達を思いながら居留地だった場所を踏みしめた。また、それぞれの思いで、在日の町を歩き、美味しい焼肉とマッコリに舌鼓を打った。
分団 講演と発題を叩き台に、それぞれの問題意識を分団で議論した。とりわけ、私学法の一部改正、キリスト教学校の将来、学校カウンセリングの在り方など各学校が抱える基本的な課題を分かち合った。
閉会 「変化する世界に堅く立つキリスト教学校」吉井秀人氏(折尾愛真中高)は現代に欠けている「霊性」を給食の譬えから説かれ、不安に揺れ動く現代の魂を救済することがキリスト教学校の使命だと結ばれ、祝福された研究会の幕を閉じた。
〈同志社国際中学校高等学校宗教主任〉
キリスト教学校教育 2005年5月号2面