キリスト教学校教育バックナンバー
聖学院大学チャペル
新しい時代の中心の発見と共同体の建設
阿久戸 光晴
学校法人聖学院は創立百周年記念事業として、埼玉県上尾市の聖学院大学に新チャペルを完成させました。傍らに高さ三十三メートルのカリヨンタワーとエルピス館・ヴェリタス館という二付属棟を擁し、一、二階席で千人収容の楕円状の礼拝堂です。
日常の全学礼拝やキリスト教的学術講演・音楽会に用いられるとともに、学生たちがいつでも祈りや黙想の時を持つことができる場です。
日本基督教団緑聖教会の礼拝堂としても用いられます。
この建設計画は一九八〇年当時の女子聖学院短大寮生たちのチャペル献金から始まりました。やがて短大全体の運動となり、その灯は後に誕生した聖学院大学に受け継がれ、大木英夫理事長・院長の陣頭指揮による全学院事業となりました。やがて香山壽夫東大名誉教授との出会いにより、チャペルとキャンパス全体の設計を依頼するところとなりました。
私はかつて香山先生に、キャンパスの中心としてのチャペルの設計を依頼しました。先生は快諾されましたが、数週間後、すでにもう一つの中心が本キャンパスにあると言われました。
存在していた建物群の南端を線で結んでいくと扇形ができます。扇は見えない中心を持っています。一見雑然としているように見えたすべての建物が、中心の周りに意味を持って存在していました。建物群は中心を囲む建物共同体です。扇の弧上に新チャペルを建設し、見えない中心から放射状に将来の建物を建設するヴィジョンが見えてきました。
ナラ材を基調とした内部は落ち着いた空間を醸します。音響も専門家の手により配慮が施されています。また聖餐台を中心とした座席となっており、聖餐台を囲んで聖書壇と説教壇が並びます。
聖餐台には五千人の給食のしるしが、天井にはノアの箱舟を象徴するしるしがあり、チャペルの正面には三十カ国語による「神は愛なり」という御言葉がステンドグラスパネルとして掲げられております。
キャンパス全体がキリストという見えざる中心とチャペルという見える中心を持つ共同体を示し、チャペル内部も主キリストという見えざる中心と聖餐台という見える中心を持ちます。この中心の回りに「教育・研究に励む大学共同体」をさらに築いていくことで、神からのご委託に応えて参る所存です。
〈聖学院大学学長〉
キリスト教学校教育 2005年1月号1面