キリスト教学校教育バックナンバー
関東地区 大学部会研究集会
今の学生とキリスト教教育
小林 俊哉
関東地区大学部会研究集会が、東洋英和女学院を会場に十二月六日に開催された。各大学でキリスト教教育がどのようにおこなわれ、またキリスト教関連科目がどのように教えられているかの実例報告に基づく研究集会も、今回で四回目をむかえた。今年は「今の学生とキリスト教教育」という共通テーマのもと、立教大学チャプレンでボランティアセンター副センター長でもある香山洋人氏、また東京女子大学文理学部宗教委員長でキリスト教学担当の小室尚子氏に発題をお願いした。
発題に先立ち、関東学院大学の村椿真理氏が「理解すること」という開会説教をおこなった。単なる「感情移入」とはちがう、真の意味における愛ゆえの批判的理解や創造的理解が必要であること。そしてイエスの愛とまなざしに根ざした本当の理解により、自他共に変えられていくという実感が教育現場に今こそ求められているという説教に、二十四名の参加者が等しく思いを共有する時間となった。
続いて香山氏から「正課外教育を通してのキリスト教教育」と題して発題があった。「キリスト教教育とは日常的な礼拝やフィールドといった参与可能な場を提示し、そこにおける出会いへと導くこと」という基本理念のもと、立教大学の正課外で行われるさまざまな活動を正課における教育との比較も交えて紹介があった。チャペル(チャプレン室)が責任を持つ各種礼拝、式典やコンサートなど非礼拝領域の活動、学生指導、チャペルキャンプ、また二〇〇三年度に全学院組織として再発足したボランティアセンターの働きなど、多彩な活動の一端が紹介された。
小室氏は「建学の精神とリベラルアーツ教育」についての発題を行った。東京女子大学における一連のキリスト教学科目についての説明のあと、大学の根幹をなすキリスト教に基づく建学理念とリベラルアーツが具体的にどう生かされ実践されているのか、またされるべきなのかが氏の発題の要諦であった。建学の精神の形骸化という可能性に常に直面しながら、それをどう防ぎつつ理念を具現化するべきなのか、大学全体にその精神が本当に生きているのかどうかの検証の必要性、さらには女子大学として機械的な男女同等ではない、違いを認めつつ真のパートナーとして男女が共生する社会を作るための女子教育や人格教育のあり方など、示唆に富む発題であった。
これらの発題に続いて活発な討議が行われた。紙面の都合で話し合われた話題の紹介にとどめざるを得ないが、チャプレンや宗教委員そしてキリスト者教員の学内でのリーダーシップの問題、リベラルアーツ教育の本当の意味、立教の場合の正課と正課外キリスト教教育の違い、カルトやそれにきわめて近接していると思われるグループへの対応、チャペルへの学生・教職員の誘導など、参加者の所属大学の事例紹介も含めて議論は展開した。
関東地区大学部会として今後は、これまで四回にわたって重ねてきた加盟大学における実例研究を基本に、キリスト教教育を具体的にどのように展開し構築できるのかについても検討を重ねて行きたい。
課題は山積しているが、「学生のわかる言葉による表現の必要性」を訴えた香山氏に共感し、「キリスト教(教育)に対する学生のニーズはある」と考察する小室氏に勇気づけられ、参加者それぞれが今後のキリスト教教育の実践に多くの示唆を得ることのできた集会であった。
〈新島学園女子短期大学教授〉
キリスト教学校教育 2004年1月号3面