キリスト教学校教育バックナンバー
第46回学校代表者協議会
主題 「今日におけるキリスト教学校の教学と経営」
分団協議の報告
法人部会(A)
この分団は、大学を抱えている学校法人の理事者の集まりであった。
佐藤先生と西田先生に、午前中の補足をしていただいた。佐藤先生からは、将来について楽観的に受け取られたかもしれないが、私学は非常に厳しい状況にある。そういう中で学校としての個性を更に明らかにすることが必要であるという話があった。
西田先生からは、アカウンタビリティとガヴァナンスという午前中の話から、ICUの学長選挙の手続きをどのように工夫しているか。地方集会で父母に教育内容の説明は勿論、財政説明もしている。大学の学科別収支、研究科収支を別にして、従来の丼勘定を改めている。授業料は一本としても学科別に施設費等で校納金に差をつけている。学校のアイデンティティーを学生たちによく知らせる為に「ICU論シリーズ」等を出している。カリキュラム外であるが、ICUの歴史と理念を理解するフォーラムをしている。評価については、最終的に私学の最も基本的な資産は教職員であって、教職員に対する人事評価システムをどの様に構築して行くか。この教職員が不良資産化しないためにどのようにしたらよいかという切実な話をいただいた。
その後、クリスチャンコード、理事会と教授会、生徒募集の苦労、公立の私学化、質向上の取り組み、教員養成、心を育てる教育、建学の精神の具体化、人事交流等の質問・意見交換の中から、西田先生は今までの運営システムを思い切って変えなければやっていけないという危機的状況の中で、いろいろと工夫を迫られている。いやでも理事会の経営能力、経営責任が問われてくる。理事会の機能の評価については、年齢制限を設けることも必要ではないか。
教育同盟としてこれを来年の協議会にむけてどのように繋げて行くかが課題である。
司会・報告 久世 了(明治学院院長)
法人部会(B)
本分団は、女子教育という分団から話が進められた。少子化の中で学生獲得に東南アジア、特に中国の学生の受け入れをほとんどの学校が行っている。この中での問題点は、留学生の日本語取得の徹底と生活指導である。特にアルバイトとか学業以外の目的で入国して来る留学生が多いので、この点をしっかり見極めておく必要がある。米国の例であるが、米国へ留学する際には今までは旅行業者に任せて入国できたが、米国大使館に本人が出向いて大学の推薦、成績証明の提出が求められている。これは必ず日本にも適応される。
次に理事会の問題が話し合われた。メンバー構成、クリスチャンコード、福音主義キリスト者、職制上キリスト者が得られない現状、理事会のガヴァナンスの問題、教授会にどこまで提言していくのか、権限を明確にしていく必要性が問われている。
理事長が非常勤である学校が多くあるが、専任の理事長という学校の例が多く出て来ている。非常勤理事長では、今後学校運営は難しい。理事長と学院長の兼務は考えざるを得ない。これもジレンマを抱えている。
司会 小玉敏子(捜真学院理事長)
報告 黒澤淳雄(フェリス女学院事務局長)
法人部会(C)
この分団は主として中高(一部短大)を運営する関係者の部会であった。午前中の佐藤先生の講演とコメンテーターの西田先生のコメント、指摘をふまえて、自己紹介、現状、課題等を話していただいた。地方差はあるが(首都圏・地方)、学校内外における教育・経営面ともに環境は大変厳しいものがある。ただこのような時にこそ、展望をもたない危機意識でうろたえるのではなく、キリスト教学校としての普遍性を建学の精神の原点に立ち返って確認し、覚醒を図りつつ王道を歩むことが大切だと感じた(小規模校からそのことを大切にして、地域の信頼を得ている学校の報告が印象深かった)。評価については、意識改革の必要性と困難さが話された。最後に教育の質(人)を高める工夫については、キリスト教学校教育同盟として“人材”バンクを考えて欲しいという要望があった。
司会・報告 黒瀬真一郎(広島女学院理事長補佐)
大学・短大部会(D)
佐藤先生の講演と西田先生のコメントを中心に各大学・短大の現状について報告し合った。それぞれの地でMissionをもって、課題(学生募集問題等)を果敢に解決されていることが印象的であった。
全体としてキリスト教同盟校として一つの基準(アクレディテーション)をつくっていることが必要ではないかという提案がなされた。全員がこの意見に同意した。今後、是非同盟としてのアクレディテーションをつくることを提案したい。
司会・報告 森 泰一郎(長崎ウエスレヤン大学学長)
中高部会(E)
自己紹介を兼ねて二つの課題が話された。
一つは、生徒募集のことである。地方と大都市とでは大きな差がある。しかし、定員割れは地方も都市も同じである。いかにして生徒を集めるかが課題である。公立校が私学の取り組んできたことを取り入れるようになった。例えば進学実績、中高一貫教育など。
もう一つは、こうした厳しい状況の中でいかに魅力ある学校づくりをするかである。キリスト教学校は心を育てる教育(宗教教育)をしている。これは生徒たちの人生の土台となっている。地方における伝統あるキリスト教教育は大きな力となっている。公立の学校では出来ないことを行っている。この建学の精神をしっかりアッピールすることが大事である。
教職員が建学の精神の共有化をし、ひとり一人の生徒に目を向け大事にする姿勢。生徒の心の中へ入っていける、魂の面倒をみる姿勢。簡単に退学させない。これが魅力ある学校づくりになる。
司会 水口 洋(玉川聖学院中高部教頭)
報告 神田道彦(桜美林学園中高事務長)
中高部会(F)
自己紹介と学校報告がなされた。その主なものは、一、男、女、別学から共学になった学校と法人の教育協定締結した学校の報告。共学化し、生徒の成績も応募数も上がっている。法人協定し、信用度が高くなり生徒の応募数が多くなった。男女の成績差が問題となっている。女子の教育、特にクラブ活動に問題がある。二、女子校からの報告。地方の学校が共学化していく中で女子校であり続けるために、「女子教育とは何か」を問うている。女子生徒の生活指導の問題が多くなった。三、生徒募集の問題。少子化で中学の応募者が減少している。生徒募集に努力しているが、そちらにばかり目が向きすぎている傾向がある。四、法人内の小学校との連携を強くしなければならない。内部進学率を高めたいが、他大学(国公立)への希望が多くなっている。五、キリスト教教育の問題。キリスト教教育を強調し、教会出席を積極的に勧めている。平和教育に力をいれ、同盟校の修学旅行平和教育のボランティアをしている。六、教職員の組織の問題。キリスト教学校は改革が遅いのではないか。
司会 花島光男(関東学院中高教諭)
報告 坂上三男(青山学院高等部宗教主任)
小学部会(G)
建学の精神を現実の学校生活にどのように具現化するかが大きな課題である。また、定員確保は校長として頭の痛い問題(男女共学の四年制大学を有していれば可)である。現在はかろうじて定員を満たしている状況である。キリスト教小学校はカリキュラム等を初めとして、それぞれ学校改革に取り組んで参考になると同時に心強い思いである(公立校の教育改革に遅れを取らぬこと)。キリスト教私学の小学校同士の人的交流(短期)も考えられると教員のブラシュアップになり、これから教員の研修もシステム化することが肝要である。キリスト教学校同士で協力できることは何か考えたい。理事会の若返りということも考えるべき点である。
司会・報告 寺澤東彦(東洋英和女学院初等部部長)
キリスト教学校教育 2004年1月号2~3面