キリスト教学校教育バックナンバー
学校法人 自由学園の紹介
思想しつつ、生活しつつ、祈りつつ
羽仁 翹
自由学園は今から八十二年前の一九二一年、東京西池袋に、知識の詰め込みでない、真の人間を育てる教育をしたいと願った羽仁もと子、吉一夫妻によって創立された。校名はヨハネによる福音書のイエスの言葉「真理はあなたたちを自由にする」からとられた。最初は七年制の女子中等教育校として出発したが、後に初等部、七年制中等教育の男子部、戦後に四年制の大学部にあたる「最高学部」が加えられ、六歳から二十二歳までの若い人を教育する一貫教育校となった。最初は、初等部以外は各種学校として出発したが、現在は最高学部のみが各種学校である。
学園の教育の特長はそのモットー、「思想しつつ、生活しつつ、祈りつつ」によって表される。「思想しつつ」は、知識の詰め込みではない、子供達自身が興味と疑問を持ち、自ら考え学ぶ勉強法を表す。創立以来行われている、一つの教科だけでなく、いくつもの分野の知識と経験を重ねての勉強法は、近年文部科学省によって推進されている「総合学習」そのものである。
「生活しつつ」は、自由学園の人間教育の真髄を表す。学校を単なる知識賦与の場ではなく、一つの社会としてとらえた羽仁もと子は、生徒たちに毎日の学校生活の運営を任せた。校舎やキャンパスの清掃維持、動植物の世話、昼食作り、様々な年中行事の運営等を、責任をもって行う「自労自治」の生活から、生徒たちは多くのことを学び人格を形成する。「祈りつつ」の種は、毎朝各部ごとに行われる礼拝の時間を中心に播かれる。ふだんの礼拝は教師が交代で司式に当たるが、イースターとクリスマス礼拝は、卒業生の聖職者をはじめ学園にゆかりのある牧師を招いて持つ。
一九三四年に学園のキャンパスは西池袋から現在の東久留米市に移り、創立時のフランク・ロイド・ライト設計の校舎は、現在自由学園明日館の名で国の重要文化財として維持、利用されている。
〈自由学園学園長〉
キリスト教学校教育 2004年1月号1面