キリスト教学校教育バックナンバー
第二回『百年史』編纂委員会を開く
― 進捗状況、今後の作業日程、調査と研究、発表方法等を協議 ―
花島 光男
一九一〇年に基督教教育同盟会として創立された現在の同盟は、あと八年で創立百年を迎える。百周年記念事業の一つとして『同盟百年史』の編集が進められている。昨年の第一回編纂委員会に次いで、第二回の編纂委員会が九月二十七、二十八の両日、葉山の国際湘南村センターで開催された。若干の欠席もあったが顧問、委員が昨年と同様に集まり、資料の紹介、調査結果の報告、作業の進捗状況の報告、今後の作業日程、調査と研究、発表方法などにつき精力的に協議が進められた。
出村彰顧問の開会祈祷、鵜川馨委員長の挨拶があり、続いて花島光男副委員長より一年間の小委員会の報告があった。小委員会は、鵜川馨、大西晴樹、大森秀子、榑松かおる、田添禧雄、花島光男で構成、資料の調査整理、書類作成などの作業のために辻直人氏を研究員として委嘱した事、小委員会は5回開催され、編纂作業の実務と、第二回編纂委員会への報告、提案などの準備をした事、当初の作業は基本資料の所在確認であった事が報告された。 基本資料については、特に戦前の資料が乏しく、その発見は急務であると考えられる。総会資料については八回より三十回までしか発見されていない。現在同盟が所蔵する資料は、かつて関東学院の坂田院長が寄贈したもので、十回、十三回、十五回、三十一回が欠けていたが、今回、十三回、十五回が関東学院より発見された。また、同志社より五回と七回の英文総会記録が発見された。夏期学校の記録は第一回より十五回までの記録は同盟に所蔵されているが、九回は未発見である。これらの未発見資料については、どこかの学校、または当時の関係者の所蔵文書の中に発見できないであろうか。今後の関係者のご協力をお願いしたい。
作業委員による調査では、キリスト教関係新聞の記事の調査が行われた。訓令十二号当時からのメソジスト、日基教会、組合教会の発行する新聞が教育同盟会をどのように扱い、評価しているかを見る事によりキリスト教界における同盟会の位置と役割を推測できると思われる。今回は塩野和夫委員により、組合教会の新聞における同盟会について膨大な資料の紹介とその分析が報告された。また大森委員、大西委員からも新聞記事の調査結果が報告された。
協議では榑松委員による素案を基に『百年史』の編集方針が検討され、以下の事を確認した。刊行は本文編と資料編とし、本文編は、原稿用紙約八百枚程度とする。加盟校の教職員に読んでもらうことを主眼とするがキリスト教関係者、また専門の研究者の批判にも耐えうる内容を目指すこと、個々のキリスト教学校の歴史を束ねたものではなく、同盟という組織の歴史を記し、同盟がキリスト教学校にどのように働きかけ、現場との関わりを持ったかを描く事とする。特定の執筆者による論文集ではなく、編纂委員会全体が文章の責任を持つ事、小委員会は作業委員会として、編集実務に当たり、全国の編集委員は調査研究等で作業を分担する。調査研究の成果を、順次『紀要』で発表し、研究者や関係者の助言や批評を求める事とした。さらに二〇一〇年の発行を目指し、作業の年次計画を立てた。
続いて戦前、戦中の目次案の検討をした。ここでは同盟会がどのような経緯で創立され、近代以降の日本の教育政策や教育問題に拮抗しつつ歩んで来たか、歴史的事実を忠実に叙述しつつ、同盟会とその活動がキリスト教学校においてどのように問題と関わってきたか、その歴史を明らかにしたいと考えた。目次項目の原案を提示したが、それらの中で十分な検討を要すると思われる事柄については、編集委員が分担しより詳しい調査、検討が必要と考えた。その主な内容は、明治初期の世界ミッションの動向、一八九九年の私立学校令と訓令十二号の問題は、従来教育同盟会の創立の理由とされたが、その定説に妥当性があるか。一九〇九年の開教五〇周年記念講演会など当時のエキュメニカル運動の動向、女子キリスト教教育会の歴史、キリスト教連合大学構想の挫折と女子大学の実現、夏期学校の歴史、エルサレム会議での「日本のキリスト教教育」の講演、聖書科教科書、音楽教師講習会、中国キリスト教教育同盟会との交流、戦時下での聖書科授業の課外扱い、女学校への校名改称の圧力、「戦時中に礼拝、聖書授業ができたか」の調査、などが研究課題として取り上げられた。これらのテーマを委員が分担して研究調査する。『百年史』が同盟の一世紀を振り返り、そこで展開されたキリスト教学校の団結と協力、又は妥協、混乱がキリスト教教育に、さらには近代日本のキリスト教にどのように作用したか、冷静に見つめ、次の百年を歩む力となるものにしたい。
百年の歴史のうち戦前戦中の部分は三十五年間で全体の約三分の一である。戦後はすでに五十七年を経過し、これを単純に一纏めに括る事は出来ない。大学紛争の時代はどのように記されるであろうか。そして終章はこれからの八年間を含むことになる。現在から見るならば、これは将来の事である。この終章をどのように記し展望するかは、現在の、さらにはこれからの同盟の姿であり、キリスト教学校に関わる私たち自身の事なのである。
〈関東学院高等学校定時制教頭、『百年史』編纂委員会副委員長〉
キリスト教学校教育 2002年11月号3面